本講座の狙い

翻訳は孤独な作業です。 ひとりで訳文作りに頭を悩ませ、壁にぶつかっても相談する相手はいません。苦心の末に納品したものに対しても、必ずしも評価やフィードバックを得られるとは限りません。 自分の解釈はこれで正しいのか。 自分の表現力はクライアントや時代の要請する水準を満たしているか。 足りないものがあるとすれば、それは何で、どんな方法で補えばよいのか。 こうした不安に囚われ足元が揺らいでいる方も多いのではないでしょうか。 本講座は、こうした不安を解消するお手伝いをするものです。お客様に近いところで日々活動している社内の翻訳者が、提出いただいた訳文はもちろん、訳文作りの思考まで徹底的に読み解き、さまざまなヒントも盛り込みつつ、添削してお返しします。 もちろん、課題に取り組む中で浮かんだ疑問や質問にもきちんとお答えします。 目標は、「トライアル突破」のさらに先、クライアントから高評価を得て仕事を継続的に受注できる水準に至ること。付け焼き刃ではない、あらゆる案件に通じる確固とした基礎体力を鍛えます。 本講座を皆様のスキルアップにぜひご利用ください。 テクノ・プロ・ジャパン代表 梅田智弘 ****************************************************************** 【いつか来る「その時」に備えて 】 世の中には多種多様な翻訳講座が存在します。大手の学校から弊社のような会社が運営しているサービスまで、その選択肢は無限に広がっているような気さえします。私も翻訳者として、これまでさまざまな講座を受講してきました。それが成長に欠かせない「投資」であると考えていたからです。 しかし、気に掛かることがありました。1つが、講座の数の問題です。選択肢が無限にあるように思えた講座も、その分野やレベル、言語は色々で、現実的に検討の俎上に上がるのはごくわずかです。それを受け尽くしてしまったらどうなるでしょう。それから、数の問題がクリアできても、金銭・時間的な問題が残ります。講座が無限にあるとしても、これから先もずっとどこかにお金(や時間)を使い続けるのでしょうか。 つまり、数と金銭・時間のどちらがきっかけになるにせよ、いつかは学び方を変えざるを得なくなる時がやってくるのではないか。私にはそのように思われたのでした。 講座(や講座に使う金銭・時間)が尽きてもなお続くのは実務です。いつまでも成長を続けていこうと思うのであれば、実務から学べればそれが一番です。ただし、私たちが実務で出会う文には、訳例も、正解の提示もないのが常です。その正解の提示がないところから学べるようにならなければなりません。 そのために大切なのは、「これで良いのか」と悩むことができる感性と、「これで良い」にしろ「これは良くない」にしろ、自らの結論に至るまでに丁寧に思考を重ねる力です。 この講座は、単純に言えば「いただいた訳文に対してコメントを返す」というだけのものですが、実務家としての私たちが感じる違和感を、その根拠も含めてできるだけ詳細にお伝えすることを大切にします。時間をかけて作ってくださった訳文に対してただ○×を付けたり、訳例どおりに直したりして済ませるようなことはしません。パイロット受講された方の訳文を例にご紹介すると、1000文字程度の訳文に対してコメント文字数が3500文字以上にのぼりました。 ここまでやる理由は、1回1回の課題に対して、できるだけたくさんの思考を積み重ねていただきたいからです。私たちは、いつか来る「その時」に備えて、答えそのものではなく、答えを導き出すための筋力トレーニングをお届けしたいのです。 また、この講座は、基本的に1回買い切りとなっています。そのため、1回お試しになって、合わないと感じたら以後は買わないという形で簡単に損切りできます。教育に対する投資は、金融資産に対する投資とは異なり、投資する自分の意識や姿勢でリターンをある程度コントロールできます。とはいえ、多額の金銭を支払ったことを気にして、熱意の湧かない講座に参加を続ける必要があるでしょうか。限りある時間と熱意は、別のカゴに盛り直すべきです。 冒頭に書いたように教育を「投資」であるとすれば、この講座も一種の投資商品です。そして、投資商品であるならば「絶対に損はさせません」と言い切ることはできません。もっとも、いただいた訳文に対しては誠意と情念をもってお返しするつもりです。ご自身の熱意が続く限り1回1回を積み重ね、実りある学習にしていただければと思います。私たちも、その熱意に応えることをお約束します。 翻訳チーム代表 矢島 有記